刑裁

友達が私の目の前で人を包丁で刺し殺した。
あっという間の出来事で、呆然と見ているだけだった。
友達は刺した後、包丁を捨てて、「死体○○に運んどいて」と言い残して逃げた。
激しく混乱する中、自分の行為の意味もよくわからないまま、友達に言われたとおり、死体を運ぼうとした。


死体と凶器を見て思う。
鋭利な刃物で胸部を一突き。傷は背中にまで達し、被害者は即死した模様。何のためらいもなく、一撃で死に至らしめる程の勢いで、心臓付近を狙っており、明確な殺意が認定できる(殺意OK)。
凶器は鋭利な刺身包丁であり、柄の部分に友達の指紋がついている(犯人性を推認する間接証拠)。
友達は、常日頃被害者に虐げられていて、被害者に対し恨みを抱いていた(動機OK、犯人性を推認する間接証拠)。
私の目撃証言が直接証拠になるから、えー…、しまった!


死体を運ぼうと引きずっているときに、はっと我に返る。
これって死体遺棄やん!や、やばい。修習生の犯罪ってまずすぎるよー。
どうしよう。このまま逃げるか?
うわ、私の服に被害者の血がいっぱいついてるよ。DNA鑑定されてしまう。
足跡も残っている。
さっき、包丁素手で触ってしまった。凶器に私の指紋も残ってる。
こんな死体引きずってるところを誰かに見られたら・・・。「午前2時ごろ、不審な人物が大きな荷物のようなものを引きずって運んでいるところを見かけました。暗くて顔はよく見えませんでしたが、身長は160cmくらい・・・」
うわー、完全に足がつくよ。逃げられないよ。
それどころか、死体遺棄じゃなくて、この間接証拠積み上げたら殺人犯にされてしまう!
どうしたら、どうしたらいいんだ!
刑事弁護人としては何と言うべきか?「ドラえもんに言われたので刺しました」
こんなんじゃだめだー!うわー!
と苦悩していたら目が覚めました。


夢の中でも刑裁修習。
絶対うなされていたに違いない。