旅行2日目(箱根観光)

この日は、おそろしいことに母の誕生日であった。母のご機嫌取りに終始する。いつもそうだけど。
ホテルの1階に入っている喫茶店の朝がゆ定食500円が、なかなかおいしかった。食べ物がおいしいと、母はご機嫌である。
天気予報を見ると、神奈川県は午後から雨とのことだったので、予定を変更して10時半頃大涌谷に行ったが、大涌谷にはピンポイントで雨雲がかかっていて、もう既に降っていた。ずぶ濡れになりながら、大涌谷散策。寒い。
富士山は全く見えず、展望はいまいちだったが、箱根登山鉄道、ケーブルカー、ロープウェイ、海賊船といろんな乗り物に乗ったので、母はご機嫌であった。
前日の教訓で、随時ソフトクリームや黒たまごを与えていたので、「おなかがすいた」とぐずることもなかった。


お昼ごはんは、ネットで調べていたせいろ蒸しの店に行こうと思っていたが、あいにくお休み。次の候補に考えていた、芦ノ湖で取れたワカサギのフライを食べに行こうと言うが、「揚げ物とか嫌」の一言。雨も激しくなっていたし、「ここがいい」と母が言うので、せいろ蒸しの店の近くにあった丼屋さんに入り、いくら丼を食べる。箱根でいくら丼を食べるとは思っていなかった。いいの、母が満足ならそれで…。


昼食後、箱根関所跡観光。ひどい雨。なんとなくイメージで関所は建物の中で、雨が降っても大丈夫かと思っていたが、大間違いで、海賊船の中で乾いた服と靴がもっとずぶ濡れになった。
海賊船の中で、「あそこに見える恩賜箱根公園に富士山と芦ノ湖がきれいに見える建物があるから、行こうと思ってたけど、この天気だからやめよう」と言ったら、皇室の別荘なら、何が何でも行きたいと言い出す。関所でずぶぬれになっても決心は変わらなかった。
恩賜箱根公園は、階段が川のようになっていて、ひどい雨。展望館からは、富士山はおろか、目の前にあるはずの芦ノ湖すら見えない。客は私と母しかおらず貸切。さっさと帰ろうと言うが、喫茶店でお茶を飲むと言って、座り込む母。喫茶店の人が「せめてこれをどうぞ」と、公園内で撮った写真のアルバムを見せてくれると、母は喜んで、1枚1枚ほとんど全部デジカメに撮っていた。
母がなかなか喫茶店から動かなかったので、私が行きたかった箱根駅伝ミュージアムはカットされた。帰り道、バス停までの道を「♪箱根の山は天下の険〜」とご機嫌に歌っていたので、きっとこれでいいんだ。


帰りのバスは、箱根駅伝で走る道を通るバスにしたので、その風景は楽しめた。母は私にもたれかかって爆睡。かわいい女の子ならともかく、小太りのおばちゃんである。重いんじゃ!肘鉄を食らわせたくなる気持ちを必死で押さえた。


山を下ると、完全に雨が上がっていた。ちょっと小田原城に寄り、中華街へ。
母はいろいろ食べたいからバイキングがいいと言う。横浜と神戸の中華街でバイキングを食べたことがあるが、料理が冷めていていまいちだった覚えしかない。オーダーバイキングの店が結構あったので、オーダーバイキングならいいかなと入る。
メニューを母に見せて、どれがいいか聞くと、「お母さんバイキングが良かったのに、こんなん嫌!」と怒り出す。オーダーバイキングの仕組みを理解してもらえるまで、非常にだるかった。
2人分にしては量が多くて困るものもあったけど、好きな料理を熱々で食べられたし、どれもおいしかったので、母も私も大満足でした。
母はオーダーバイキングにいたく感動し、この後旅先で会う人に、「中華街でオーダーバイキングがすごくおいしかった、普通のバイキングと違って熱々でね…」と自慢気に話し、私に恥ずかしい思いをさせることとなる。


この日は、雨が降って寒かったせいだと思うが、母はやたらとトイレに行きたがった。「おしっこしたい。トイレどこ?トイレまだ?」と私を困らせる。「もう、さっきトイレの横通ったのに、なんであのとき言わんのよ!」
昨日は「おなかすいた」、今日は「おしっこしたい」。生理的欲求のままに生きる人だ。子供連れて旅行したらこんな感じでしょうか?
子供の頃から、母にどんなひどいことを言われても、「どうせこの人は脊髄反射でしゃべってるから」と思って気にしないことにしているが、やはり母は本能の人だ、と改めて認識する旅となった。