海外研修記その6 〜青蔵鉄道編③〜

中国の特急には軟臥(一等寝台)、硬臥(二等寝台)、軟座、硬座とあります。
11年前に来たときは硬座で中国を横断してしまいましたが、今回は硬臥にしました。軟臥は分不相応です。丸2日近く乗りっぱなしなので、横になれるのはやはり楽です。

硬臥は三段ベッドのようなものが向かい合っていて、6人一部屋のようになってます(軟臥は二段ベット、4人部屋で入口にドアがあります)。
私は下段。下段が一番揺れなくて一番値段が高いですが、昼間は椅子代わりに使われます。
夜中に目が覚めると、窓から星が見えました。寝っ転がったまま、満天の星をぼーっと眺めました。これも下段ならではの贅沢です。

通路はこんな感じ。ベッドにいるか通路のイスにすわっているかしか居場所がないし、下段以外の人は、自分のベッドから景色が見にくいので、通路のイスは結構いつも満席で、イス取りゲームのようになっていました。


だいたいずっと4000m以上の高所を走るため、高山病でぐったりしている人もたくさんいました。私が乗った車両は、チベット人率が高かったせいだと思いますが、高山病に強い人が多かったようで、通路のイスが満席でしたが、みんなベッドで寝ていて、通路に人がほとんどいない車両もありました。

ベッドの脇には酸素吸入口がついています。時々お姉さんがストローを配りに来るので、それをもらって酸素を吸っている人もいました。どれくらい楽になるのかはあまりわかりませんでしたが。
私は以前高山病で大変しんどい思いをしたことがあるので、高山病は心配していましたが、電車に乗っているだけだったからか、全然普通で拍子抜けしました。


車内販売のお姉さん。食事時にはご飯を、それ以外もお菓子や果物などを売りに来ます。

朝食。おかゆと饅頭(まんとう。肉まんの皮だけのやつです。具が入っているのは包子(パオズ)と呼びます)。

昼食。お弁当風。車内販売だと夜もこんな感じです。

夕食。食堂車に行ってみました。
中国での食事の注文は、メニューの漢字を見て感性で注文するのですが、想像と違うおかずが来てがっかりすることも・・・(1品は青椒肉絲で固く注文してます)。
食堂車には中国軍人がたくさんいて、お酒を飲んで盛り上がっていましたが、軍人を写真撮影すると大変怒られるので、カメラを向けてはいけません(実は向けた)。


和光でのクラス会のときに、「チベットに行く」と言ったら、某修習生から「チベットに行くなら『ダライラマ自伝』を読まないと」と言われ、出発直前に『ダライラマ自伝』を買って旅行中読んでいました。
車内で読んでいると、チベット人が何人も「ちょっと見せてくれ」と言ってきました。本を渡すと、表紙のダライラマ14世の写真を額に当てて、お祈りを始めます。本の中の写真もみんなでじっくり見ていました。
でも、「電車を降りたら、その本は隠した方がいい」と何人もから言われました。
チベットでは、1959年にインドに亡命したダライラマ14世の写真を持つことは禁止されています(電車の中で知った)。下手に見つかって軍人と揉めるのは避けたい。「司法修習生チベットで拘束」なんて新聞に載るのは嫌だ。


鉄道には様々な国・地域の人が乗っています。
漢人の学生、チベット人のお坊さん、日本人の私たちと片言英語と筆談で話をしていたとき、私が中国人(チャイニーズ)、チベット人チベタン)と言い分けて、それぞれに文化の違いなどを聞いていたら、漢人の学生から"They are Chinese."と不思議そうな顔をして言われて、ハッとしました。
20代の学生の彼は、チベットが中国であることに何の疑問も持っていない。そういう教育を受けてきたんでしょう。チベタンは微妙な表情をしていましたが、何も言いませんでした。何も言えないんでしょう。
漢人の学生が悪いわけじゃないけど、学校で教える歴史教育って怖いなあと改めて思いました。日本人は彼にはどのように映るのでしょう。

ダライラマ自伝』より評判が良かったのは、チベットのガイドブック2冊。チベットの写真がたくさん載っているので、日本語がわからなくても、写真は楽しめます。本当に飽きずに何時間も食い入るように見ていました…。
何がおもしろいのかわからなかったけど、チベットの農民の写真を見て、えらくウケていました。友達が載ってたのか?